法人での防災備蓄の準備をする前に見るべき、
基本的な考え方やガイドラインをまとめたページです。
企業には、従業員や顧客の生命の安全を第一に考えなければならない責任があります。さらに、帰宅困難者への支援、災害発生時の地域支援、地域社会の一員として災害の復旧・復興に貢献する責任も負っています。災害発生時に向けた対策として、日常から行える活動の一つとして、防災備蓄があります。また、災害発生後3日間は「応急対策活動」を優先するため、不用意な移動を控える必要があります。
平成24年に定められた「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」(首都直下地震帰宅困難者等対策協議会)には下記のように記されています。災害が発生したときの被救助者の生存率は4日目以降激減する(72時間の壁)ため、災害が発生してから3日間は、「応急対策活動期」として、救助・救出活動が優先されます。
> 参考:国土交通省 近畿地方整備局 震災復興対策連絡会議
阪神・淡路大震災の経験に学ぶ(別ウィンドウで開く)
上記の阪神・淡路大震災の生存率のデータ(震災当日は75%、2日目24%、3日目15%、4日目5%)と、人間が水を飲まずに過ごせる限界が72時間と言われています。72時間を過ぎて急に亡くなるわけではありませんが、72時間以内であれば安全に救助できる傾向があることから、人命救助では72時間以内の負傷者の救助を目指しています。
東日本大震災の自衛隊の人命救助数の表を見ると、発災から72時間が経過した段階で、自衛隊が救助できた人数が大きく減少しています。
<解説> 人命救助における初動(72時間以内)の重要性 (2012年 防衛白書)
災害発生後3日間は、救助・救出の妨げにならないように、従業員等を一斉帰宅させないようにする必要があります。そのため、従業員等を施設内に待機させる必要があります。これを「3日間待機」と呼びます。
一斉帰宅を抑制する理由は、大阪府の作成した動画が理解しやすいので御覧ください。
帰ったらあかん!STOP一斉帰宅 の動画がわかりやすい (Stock-stock防災コラム)
『帰ったらあかん!〜大阪府からのお願い「STOP!!災害時の一斉帰宅」〜』(YouTube)
企業は従業員を3日間、施設内に待機させる必要があるので、「3日間分の人数分の備蓄をすること」がガイドラインや条例で努力義務として定められています。備蓄の量については、「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」(内閣府,2015)を引用したものを下記に記載します。
BCP(事業継続計画)は、中小企業庁、厚生労働省、各業界のガイドラインがあります。基本的にガイドラインに従って策定していくことで計画を進めることができます。BCPは従来の「防災計画(災害時の対応)」に「事業継続させるための計画」を加えたものと考えて問題ありません。
各種BCPガイドラインは事業継続計画がメインの筋書きとなっているため、防災備蓄については記載が不明瞭な箇所が多いことから、ここではBCPの防災備蓄に関する解説をします。
まず災害発生時の初動対応から必要な資材や備蓄の概要をわかりやすく説明します。
災害発生後にBCPが発動された場合、企業は防災組織を立ち上げ、事前に決めた各班の役割に従ってそれぞれの担当者が行動を起こします。上記は「消防班」「安全指導班」「救護班」「応急物資班」「情報班」「事業継続班」の防災組織を立ち上げる例です。行動班を考えることが災害時の初動対応を考えることの第一歩です。
初動対応の班の役割が明確になったので、災害時に行動できるように各班の必要資材を見ていきます。
安全指導班は「メガホン」、救護班は「ヘルメット・救助工具・担架・救急セット」、応急物資班は「発電機・投光器・コード・ランタン・食料・水・毛布・トイレ」、情報班は「ラジオ・ポータブル電源」などが必要があることがわかります。
防災組織の班の役割別に必要なものがわかりました。それでは保管方法について検討してみます。
保管に関しては災害発生後の時間軸に沿って備蓄の種類を下の図に記載しました。
災害発生後すぐに必要なのは「初動対応の資材」で、初動対応後に必要なのは「3日間待機用の備蓄」です。それぞれの保管場所は「初動対応の資材」は防災組織の本部を設置する予定の場所に置き、本部の場所を狭くしないように、異なる場所に「3日間待機用の備蓄」を置くのが効率的です。
初動対応用の資材を弊社の製品で挙げると、
「防災組織立上げ+救命救助 自然災害の初動対応セットG2」が代表的な製品です。
ガスボンベ式発電機(1台)、ガスボンベ(36本)、充電式投光器(2台)、コードリール(1台)、ランタン(2台)、ラジオライト(2台)、メガホン(1個)、ヘルメット(4個)、救助工具(1セット)、救急セット(20名分)がストックストックに入った製品です。
扉には内容を示すマグネットアイコンがついているので、すぐに初動対応セットであることがわかるようになっていることから、初動対応セットを探す時間を短縮できます。
3日間待機用の備蓄例としては、
「Completed Version2T 28人分セット(DS4-CT)」が代表的な製品です。
3日間待機で必要な備蓄がひとり一箱でまとまったボックスがストックストックに28個入った製品です。
7年保存のアレルギー対応の食料(レトルト食品6食・米粉クッキー3食)と備蓄水(500mlx3本)に加え、非常用トイレ(15回分)が一つの箱に入っています。
BCPにおいて防災備蓄を検討する項目は限定的ですが、「災害時初動対応」や「3日間待機」についてのルールを制定する際に、必要資材・備蓄が何で、どのように使うかなどを検討しておくと、災害が発生したときも不安にならずに安心して行動できます。
食糧・水などの備蓄品は利用期限が定められています。その他にも、電源の場合は充電能力、消火器の場合は、粉末の有効期限があります。備蓄も有効期限がバラバラなため、有効期限が切れた食糧や水などを放置したままの状態の企業が多く見受けられます。いつも使っていないものの期限を気にするのは大変な労力でコストもかかってしまうので、注意が必要です。
会社の防災備蓄の期限は確認できていますか?(Stock-stock防災コラム)
一般的に大企業などでは、自社で防災備蓄の棚卸しは行わず、弊社などの防災備蓄品の販売会社の「管理代行サービス」を利用して、「備蓄品リスト作成」から、年に一度の「棚卸し」、「次年度期限品の報告」などをアウトソーシングします。
それに対し、中小企業などでは自社の総務部門などが棚卸作業を行い、数量と有効期限のチェックを年に1度行うことが多いです。
ストックストックDSシリーズには「備蓄品期限表示マグネット」というオプションがあります。これは従業員に対して備蓄品の有効期限を伝えるもので、備蓄庫に掲示することで、備蓄庫内の「備蓄品の有効期限の見える化」を行います。
小規模な会社では、様々な理由により備蓄品の管理が継続できない場合があると考えられます。そのような場合でも、備蓄品の有効期限をはっきりと書いてあることで、「有効期限が切れそうだよ」と従業員から会社に指摘することができます。
とてもアナログな方法ですが、常に「見える」ようにすることで「期限切れの防災食の備蓄」を防止する効果が期待できます。(「備蓄品期限表示マグネット」は防災備蓄庫のオプションで、単体販売はしていません)
期限が近づいてくると、防災備蓄の入れ替えを検討する必要があります。
期限切れ前の防災食についてどのようにしているでしょうか。少量の場合だと従業員や生徒に配布する方法も可能ですが、大量の場合は廃棄処分しているのが現状といえます。
2021年の朝日新聞の記事によれば、省庁の100万食の防災食のうち毎年20万食が廃棄されているとのことです。しかし、以下に紹介するような大量の食品ロスを削減するための手段もあります。
グリーンデザイン&コンサルティング社の「サスティナブル防災システム」は、期限切れの防災食を「フードバンク」や「こども食堂」などで有効活用するための仕組みです。廃棄するためには「産廃処理費+配送料」がかかりますが、この仕組みでは「配送料」のみの負担で食品ロスを削減し「SDGs」に貢献できます。
消費者庁や農林水産省の見解によると、期限が切れている場合でも、賞味期限は安全率を見て日付が決まっているので、下記の条件では、廃棄せずに食べるように推奨しています。
直射日光や高温多湿の環境で保管されているような、「適切に保管されていない」場合は例外ですが、図の期間内であれば、食品ロスの観点から廃棄しないで食べたり飲んだりすることが望ましいです。詳しくはこちらのページをご覧ください。
防災備蓄の保管・収納をする場所でイメージされるのが多いのが、地下の倉庫であったり、フロア内の倉庫ではないでしょうか?倉庫などは通常の勤務時間内ではあまり行くことがないスペースが多いことから、防災備蓄の設置場所を正しく知っている従業員は実は少ない可能性が高いです。
見えない場所に設置していると、備蓄食料の有効期限が切れていたり、ライトからの電池漏れが発生したり、備蓄機器が災害時に正常に動作しないことが考えられます。そのような意味でも、防災備蓄は、実はオフィス内に保管や収納する方が、常時目に見えることから、場所を改めて覚える必要がなく、備蓄品について関心も持ちやすく効率的です。さらに、実際の災害時にすぐに使うことができます。
オフィス内に備蓄を置くスペースは限られているため、すべての防災備蓄をオフィス内に置く必要はなく、「災害が発生したらすぐに必要な備蓄」をオフィス内に保管・収納し、それ以外の3日間待機で必要な大量の防災食や備蓄品を倉庫におくようにすることで、発災日初日に担当者が不在でも従業員が落ち着いて行動ができるようにすると、効率よく防災備蓄を配置することが可能です。
オフィスに置く備蓄と倉庫に置く備蓄の商品例として「ガイドライン準拠7年保存 28名セットB」があります。
内閣府の「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」に準拠した3日間28名分の防災備蓄品が揃ったセット(省スペースタイプ)です。
帰宅困難者ガイドラインでは水の量が一人あたり9L(3日間)で、備蓄水のボリュームが大きいことから、備蓄水は倉庫で保管し、それ以外の災害備蓄品はオフィスの中で省スペースで保管できるようにしています。
ストックストックは「行動科学の手法を用いた望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチ」であるナッジの考え方を取り入れて、「防災備蓄を探すことなく、すぐに使える」ようにしています。
一般的に「防災備蓄は見えない場所に隠される」ものですが、災害が発生すると、不安な状態や落ち着かない状態となるため、集中できないときなどの人間の特性である「自分の見たものがすべて(外部リンク)」が働いてしまうことから、「見える場所に置くのが最適」となり、「災害時に防災備蓄を探す必要がなくなる」ようにするために、「見える場所に置きたくなる備蓄庫」として開発しています。
防災備蓄を倉庫に集約配置している企業は多いと思われます。しかし、オフィスビルで集約配置した場合、災害が発生するとエレベータは利用できなくなることから、水や食料などの重量がかさばるものを階段で運ぶ必要がでてきます。災害時に階段が使える保証もないため、備蓄倉庫にアクセスできない可能性があります。
さらに集約配置をすると、昨今の台風などでは、備蓄倉庫の備蓄が水浸しになり、利用できなくなる事例などもあります(2019年台風19号の仙台市など)。倉庫等の集約配置を行うと、スペースなどが効率的につかえて良い反面、倉庫にアクセスできない場合や、倉庫自体が災害にあった場合は、備蓄品が利用できない事態に陥ります。そのような理由から、従業員の近くに備蓄品を保管しておく必要があります。各フロアや、グループ単位での備蓄配置を行うことが理想です。
企業の防災備蓄に関する条例やガイドラインは、各都道府県、市町村ごとに定められています。ここでは、代表的な3つの条例・ガイドラインをご紹介します。事業所の所在地により多少異なる場合がございますので、最終的には、事業所がある市区町村において確認をしてください。
事業者は、大規模災害の発生時において、管理する事業所その他の施設及び設備の安全性並びに周辺の状況を確認の上、従業者に対する当該施設内での待機の指示その他の必要な措置を講じることにより、従業者が一斉に帰宅することの抑制に努めなければならない。
事業者は、前項に規定する従業者の施設内での待機を維持するために、知事が別に定めるところにより、従業者の三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努めなければならない。
従業員等が企業等の施設内に一定期間待機するためには、必要な水、食料、毛布、簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等)、燃料(非常用発電機のための燃料)等をあらかじめ備蓄しておく必要がある。その際、円滑な備蓄品の配布ができるよう、備蓄場所についても考慮する。
中央防災会議が定めた「首都直下地震対策大綱」において、発災後3日間程度を応急対策活動期としていること、また、発災時の被救助者の生存率は4日目以降激減することから、発災後3日間は救助・救出活動を優先させる必要がある。そのため、従業員等の一斉帰宅が救助・救出活動の妨げとならないよう、発災後3日間は企業等が従業員等を施設内に待機させる必要がある。このことから、備蓄量の目安は3日分とする。
平常時
大規模地震発生により被災の可能性がある国、都道府県、市区町村等の官公庁を含む全ての事業者
雇用の形態(正規、非正規)を問わず、事業所内で勤務する全従業員
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