2024年7月改定では「災害時の情報伝達の雛形となる情報伝達シナリオ」と「一斉帰宅抑制後の分散帰宅」の2点が追加された。
東日本大震災を機に内閣府にて策定された「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策ガイドライン」が施行されたのが2015年で、それから9年が経過した2024年7月に初のガイドライン改定が実施されました。
ガイドライン自体は細かく定義されていて、企業の防災担当者がすべてを把握しているとは考えにくいことから、本コラムでは、改定ポイントをわかりやすく解説することとしました。
「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策ガイドライン」の基本事項については、弊社の「法人の防災備蓄について」をご覧ください。
基本的な「3日間待機」「一斉帰宅抑制」の2つの方針は変わらず、
1)「行政や、交通機関、一時滞在施設、企業など」が帰宅困難者に対する情報提供のルールを明確にするための情報提供シナリオを追加
2)「一斉帰宅抑制」の期間が終了したあとに、みんなが一斉に帰宅しないように、時間差や、移動手段などの分散化をする方針を決めて、混乱しないようにする。つまり「やっと帰れる、さようなら」ではいけません。
という2つの点を追加しています。
改定前までは、帰宅困難者に対する情報提供のルールが存在しなかったから、提供する団体によって情報が異なる場合があったりするなど、統一された情報でない傾向があったから、それをなるべく統一して、各団体で連携ができるようにしよう、という話です。
上のシナリオの企業等の部分だけを抜粋したものを図にしました。
平時の構えでは、「一斉帰宅抑制」や「帰宅ルール」の周知などを行い、大規模地震が発生してからは、被害状況や交通情報、施設内待機、企業で決めたルールを従業員に伝える。
交通機関が運転再開し、「一斉帰宅抑制」が解除されてからは、集中して従業員が帰宅しないように、時間や移動手段などを分散させて帰宅させるようにする。
という流れで記載されています。他の団体との連携は情報提供シナリオを参照してください。
帰宅が可能な状況になった場合であっても、移動に伴う新たな混乱の発生防止、及び帰宅困難者等自身の安全を確保するため、待機していた帰宅困難者等は、一斉に帰宅を開始するのではなく、時間的あるいは空間的(移動範囲や移動手段等)に分散して帰宅することが基本である。
と、参考資料10には帰宅の基本方針としての「分散帰宅の基本原則」が定義されています。
「時間差をつけたり、移動手段などで、集中しないように工夫するようにしてください」とのことです。
2024年7月26日の改定に伴って、内閣府の一斉帰宅抑制のリーフレット(PDF)も改定内容を反映したものとなりました。
企業の防災担当者としても、内閣府のガイドラインをすべて理解することは難しいと思いますが、基本は「3日間待機」「一斉帰宅抑制」を基本方針とした上で、今回の改定において、帰宅困難者対策の企業での注意すべき点は、
1)災害発生時の従業員への情報伝達は、「情報提供シナリオ」を参考にする
2)「一斉帰宅抑制」が終わったあとの、従業員の帰宅は「分散帰宅」を基本原則とする
の2点に注意するという点となります。
2024年は1月1日の「能登半島地震」、8月8日の「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)の発令、9月の台風や線状降水帯などの水害などの発生等もあり、企業の防災担当としては、どのタイミングで発生してもおかしくないと考え、会社のBCP(事業継続計画)を考えていく必要があります。
今回の改定は、より現実的に対処しようと考えている内閣府の姿勢を感じることができる内容でした。特に「分散帰宅」については、今までBCPの視点からは後回しになる傾向があったため、政府として行動を明示したことは大きいと考えます。(鳥居)
大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン(概要)
(PDF形式:538.4KB)(令和6年7月改定
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